◇消えない思い出、心の中のアルバム
今日、2月20日は、盲導犬シエルと私がともに歩み始めた、大切な記念日です。
ちょうど5年前のこの日、私はシエルとの新しい人生をスタートさせました。
昔、新聞のコラムで「5年前の自分が何をしていたか覚えていない人生は、その5年があってもなくても同じで、もったいない」という言葉を読んだことがあります。
けれど、私はこの記念日だけははっきりと覚えています。
シエルとの日々は、決して忘れることのできない、かけがえのない時間だからです。
シエルと暮らす前、私は盲導犬センターで4週間の「共同訓練合宿」を受けました。
週に一度、自宅に帰り、休み明けには再びセンターに戻る生活。
戻る駅には、いつもシエルが私を待っていてくれました。その時のシエルの様子を、教官の先生が写真に撮ってくれたのですが、残念ながら私はその写真を見ることができません。でも、先生が丁寧に説明してくれたおかげで、そのシーンは私の心の中にはっきりと残っています。
「心に残る光景」といえば、私の目がまだ見えていた頃の思い出がひとつあります。
ある素敵な先生の個展を、妻がプロデュースし、私もお手伝いをしました。
イベントの打ち上げの最後に、スタッフ全員で記念写真を撮ることになり、私が撮影を担当することになりました。ところが、その頃はフィルムカメラの時代。
シャッターを切ろうとした瞬間、フィルムの残量が「0」になっていることに気づきました。
集まった皆さんは、服装や髪形を整えて、撮影の準備を整えていたというのに……。
私は青ざめながら、「申し訳ありません……フィルムがなくなってしまいました」と謝ると、先生は笑顔でこう言いました。
「いいのよ、いいのよ。そこで“カシャッ”って言って、みんなの心に残せばいいのよ。」
その瞬間、私ははっとしました。
形ある写真がなくても、心に刻まれた光景は消えないのだと。
あの日の写真は、今も私の心の中にはっきりと残っています。
形あるものは、時が経てば色あせたり、壊れたり、失くしてしまうこともあります。
でも、心に焼きついた映像は、決して消えることはありません。
シエルとの思い出も、これから先ずっと、私の心の中で輝き続けるでしょう。
シエル、5年間の時間をありがとう。
そして、出会ってくれてありがとう。
※写真は以前にもこのブログで使ったことがあるもので、2020年に改札で私を待ってくれているシエルです。
0コメント