◇400の眼が私の眼になった日
11月9日に出版記念講演会を開催したことは、前回のブログで書きました。
今回は、その後に起きた心温まるお話です。
先日の講演会に来てくださった多くの方は、私が目が見えなくなってから新しくご縁をいただいた方がほとんどで、そのお顔を知りません。 そんな中、ずいぶんご無沙汰していましたが、お顔がわかる大切な友人 「ともこさん」が来てくれていました。
講演の後、しばらくしてから、ともこさんと電話で話す機会がありました。
そのとき、ともこさんが、こう言ってくれたのです。 かめさんは目が見えなくなってしまったけど、講演の日、200人の400の眼が、かめさんの眼になっているなと思ったよ。
その瞬間、涙腺が一気に崩壊して、涙があふれました。
ともこさんは、見えていた時も、見えなくなる途中も、見えなくなってからも、いつも変わらず私に勇気を与えてくれている大切な人です。ありがとうございます。
電話を切ってから、その言葉をしみじみ思い返していると、あの日来てくださった皆さんの優しさが胸に広がり、また涙になりました。
考えてみれば、私は日々、家族をはじめ、多くの仲間の眼に支えられています。
いや、いつも会っている知り合いだけでなく、しばらく会えていない人や、町で出会う知らない人まで、多くの人の眼が私を守ってくれています。 そして、いつもそばで黙って眼になってくれているシエル。
私の見えないところで、こんなにも沢山の眼に支えてもらっていることに気づき、感謝で胸がいっぱいになりました。
昔、盲学校で、ある盲人の先生が、授業のサポートに入ってくれていた晴眼者の先生に 「先生、ちょっと眼を貸してください」 と言っていたのを聞いたことがあります。 初めて耳にした眼を貸すという言葉に、なるほど、と深くうなずいたのを覚えています。 手を貸して、力を貸して、があるように、確かに眼を貸して、もあるのです。 これからも、多くの人の眼を借りながら、幸せの入り口屋を続けていきます。 そして、もう一つ嬉しい出来事がありました。 講演会が終わってしばらくして、郵便物が届きました。 私の本「盲導犬シエルと歩いた幸せの道」の表紙を描いてくれたサクラさんからの贈り物でした。 私とシエルの可愛い絵で作ってくれたアクリルスタンドです。 私の知らないところで、見ていないところで、作って喜ばせてやろう、と思ってくれたその気持ちが本当に嬉しくて、感激しました。 仲間からも大好評で、私にとって、またひとつ素敵な思い出になりました。 さくちゃん、本当にありがとう。 眼が見えるか見えないかは関係なく、たとえ見えなくても、たくさんの眼がある。 思ってくれている人がいる。 そう感じるだけで、世界はまた優しくなるものですね。 見えない眼で見る世界も、悪くありません。
優しさの眼に囲まれて、生きているって幸せですね。
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