◇守ってくれた白い杖

 今時のスマホやパソコンは郵便番号で住所が有る程度入力出来るので、郵便番号もお知らせした方が良いだろうなと、私の事務所の住所の郵便番号を確認しました。
私は出先からNTTの「104」に電話を掛け、大阪市の私のマンションの管轄の区役所の電話番号を教えてもらいました。
そして「私は盲人なのですが昨夜、道路のマンホールの孔に白杖を落としてしまったのですが、どちらに相談すれば良いでしょうか?」と区役所の代表に電話を掛けました。
担当の人が下水の管理部署の電話番号を教えてくれたので、そちらに掛けました。
「実は、こうこうで白杖をマンホールの隙間の孔から落としてしまったのですが、こちらで良いでしょうか?」と確認した後、落とした場所の説明に入りました。
私の事務所のマンションの郵便番号、住所、マンション名を伝えました。 
そして「マンションを出たら、南北に中程度の幅の道路が通っていて、マンションから南に30歩ほど歩くと、信号のない交差点に出ます。それを渡り、70歩ほどで千日前通りに突き当たるという場所です。
その30歩ほど歩いたところの交差点の中央辺りのマンホールなのですが、私の白杖はとても細い杖なので小さな隙間から落ちてしまったのです」と伝えました。
すると「それは大変ですね。すぐに担当に行ってもらうようにしましょう」と窓口の女性が親切に言ってくれたので「今日は予備の杖がありましたから、そんなに急ぎません。もし取れたら取っていただけるとありがたいです」と伝えました。
それから40分後、担当の男性の方から「無事に杖を取り上げましたよ。洗ってここにあるのですが、どうしましょう?」の電話がありました。
私は出先であることを告げ、「じゃあ、誠に誠に申し訳ないのですが、杖は折りたたみが出来ますから、マンションのポストに入れていただくことは出来ますか?」
「はいっ、良いですよ。入れておきますね」と、とても優しく言ってくださいました。
私は胸がいっぱいになり、「○田さん、本当にありがとうございました。助かりました」と頭を深々と下げてお礼を言いました。
電話を切ってから、最初の下水の管理部署に電話を掛け、先ほどの受付の方に報告とお礼を言い、○田さんにろしくお伝えください」と、お礼を伝えました。
担当の方が「良かったですねぇ」と、優しく喜んでくれました。
感謝溢れる、幸せな朝になりました。
昨夜は「もう、どうしようもないなぁ」とあきらめ、「次の杖はいつ買いに行こう?行くのもなかなか手間だなぁ」と考えていました。
今朝「あれでも」と電話を掛けてみて良かったです。
親切な方で良かったです。 
優しい方につながって良かったです。
盲学校の時の弁論大会で話した最後のフレーズが思い出されました。
「決して 決して あきらめないで あなたの夢を。 あきらめたら…、そこまでですから」

しかし、「あの直径が1センチもない小ーさな穴に落ちるとは…」と、不思議でなりません。
きっと、あのまま何事もなく歩いていたら、大きな事故になっていたのかな?と。
私の杖が身代わりになり、それを守ってくれたのでしょう。 
そして、また帰ってきてくれた。 
にこっ! 亀ちゃん
※写真は盲導犬・ミッケルと秋の里山を散歩

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